事業承継における親族外承継(従業員)

事業承継における親族外承継(従業員)

中小企業においては所有と経営が分離していないことが多く、従業員等の親族外に事業承継をさせるということはあまり多くありませんが、昨今の後継者不足により、従業員を経営者に内部昇格させて事業を引き継がせるケースが増えています。

 

形態別事業承継の推移

事業承継における親族外承継(従業員)
出典:2014年度版中小企業白書

 

従業員へ事業承継するメリット

 

従業員への事業承継は、メリットは少なくありません。

 

メリットの一つには、自社の業務内容に精通しているということが挙げられます。親族への承継の場合、その親族が他の企業で働いていることがあり、入社させて教育する直接的な費用や時間的な費用も馬鹿になりませんが、従業員の場合は、そのようなことはありません。

 

もう一つのメリットは、顧客との信用を引き継ぎやすいということです。既に顧客の担当者との面識がある場合も多く、引き継ぎは難しくありません。逆に担当者との面識がない場合でも、自社における経歴が長いことが分かれば、顧客は安心するものです。

 

従業員へ事業承継するデメリット

 

デメリットの一つには、経営的な能力が不足しているケースが想定できます。また、昇格できなかった他の社員からのやっかみもあり得ます。ただし、これは親族であっても同様ですので、殊更デメリットとして強調する必要はないかもしれません。

 

もう一つのデメリットは、資産の問題です。資産としては、株式や不動産、役員借入金など挙げられますが、現在のオーナー経営者が所有するこれらの資産をどのように承継していくのかが大きな問題となります。

 

解決策

 

まず、株式の場合は、特別決議が行える発行済み株式数の3分の2を後継者の従業員に売り渡すことが一つの手段として考えられます。この場合従業員は、資金を借り入れたりする必要が出てきます。また、議決権制限付き株式を活用して、議決権付きの株式だけを譲渡することもできます。これであれば従業員の負担は少なくて済みます。

 

株式の場合は、所有と経営を分離させて考えるということもできます。簡単にいえば、上場会社のようにサラリーマン社長にするということです。後継者の負担が少ないというメリットがありますが、先代の経営者が経営に口を出さないことが重要となります。

 

不動産の場合は、事業用の土地であれば、既に先代経営者が会社に貸し出しているという可能性もありますので、この場合はそのまま賃貸を継続してもらうことができます。

 

役員借入金は、金融機関が融資をする際に、資本金に算入する場合があり、注意が必要です。場合によっては、DESが必要となります。

 

相続には気をつけなくてはいけない

 

上記のような手段を用いれば、当面の経営は引き継ぐことができます。しかし、完全な事業承継とは言えない場合もでてきます。なぜならば、現経営者の資産は、いつか相続されることになるからです。もちろん、遺言による遺贈ということで、従業員に相続させることもできなくはありませんが、この場合でも遺留分の問題がありますし、通常は自身の親族に相続させるものだからです。

 

株式の場合は、所有と経営の分離が明確であれば、相続で会社に影響は出ることはないものの、やはり、相続人が拒否権や解任請求権を持つということは、経営者として避けたいところです。できれば、議決権はしっかり確保したいものです。

 

事業用の不動産の場合も、相続人が相続税を払えずに当不動産の売却を考える等、事業の相続に影響を及ぼすようなケースが考えられます。この時点で会社が買い取るということもできますが、できれば相続開始前に現経営者から買い取ることを検討したほうが良いでしょう。