事業承継における税金と節税

事業承継における税金と節税

この記事では、事業承継においてどのような税金がかかり、どのような節税ができるのか考えてみます。

 

税金が徴収されるケースには様々なものが考えられますので、まず経営者(オーナー)の生前、相続(死後)というように分けて考えてみます。

 

生前における節税

 

生前で考えられる税金は、事業用資産(経営者名義の土地や建物、機械)や株の生前贈与で発生する贈与税です。
税率は、200万円以下の10%をはじめに、累進的に税率が上がることになります。この際、基礎控除として、110万円が引かれた後の金額(課税価格)に税率をかけます。逆に言うと、110万円以下であれば、税金は発生しないということになります。ただし、額が小さいので、例えば1,000万円分の株式を無税で贈与したいと思った場合、10年に渡って分割して贈与しなければならなくなります。これはかなり非現実的です。

 

このようなことをしなくて済む制度があります。それは、「非上場株式等についての贈与税の納税猶予制度」というもので、いくつか要件がありますが、後継者への非上場株式の一括贈与(議決権の3分の2に達するまで)にかかる贈与税の支払いが猶予されるというものです。勿論、免除ではありませんので、納税義務はありますが、後継者への議決権の集中ができ、スムーズに事業承継が可能となります。

 

また、株を贈与したい場合、このような制度を利用する以前に、株式自体の価値を下げることによって、結果として節税するというやり方もあります。税金の算定基礎となる株価というのは、会社規模によって類似業種比準方式と純資産方式を組み合わせることによって計算することで算出されますが、計算式の中に配当金額や利益金額、純資産価額がパラメータとして組み込まれていますので、これらを正当な手段で下げることによって、株価を下げることが可能になります。

 

例えば、配当金額については内部留保し、先代経営者の退職金支払で利益を押し下げることもできます。更に、売掛金や棚卸資産の中で不良資産となっている部分を廃棄損や評価損で計上することで利益を下げることができます。特別目的会社を活用したややアクロバティックな方法もあることはあります。このような方法で株価を下げ、贈与税等を節税することができます。

 

相続における節税

 

相続段階になって初めて事業承継を考える中小企業の経営者が多い傾向にあります。ただ、相続人が複数人いる場合は遺言による遺贈でないと後継者に株をはじめとした資産が集中できないことに加え、法改正により相続税の基礎控除額が5,000万円+1,000万円×法定相続人の数という計算式から、3,000万円+600万円×法定相続人の数という計算式に改正されたことで、実質的に大幅に増税されていますので注意が必要です。

 

相続税の節税については、現金・預金が相続財産として多い場合、不動産を購入することによって節税が可能です。これは、相続税の評価において、建物が固定資産評価額(建築費の50~60%)、土地が公示価格の80%で評価されることから、よく行われる相続税対策です。ただし、タワーマンションについては、節税効果が高く、不公平感があることから、今後何らかの対策が取られる可能性があります。

 

事業承継を行う場合の節税

 

事業承継では、上記の生前贈与を活用することが有効です。そこで、贈与における相続時精算課税について考えてみます。この制度は、贈与時に2,500万円までは無税となり、2,500万円を超える部分に20%贈与税がかかるというものです。このように書くと節税になるように見えますが、相続時に贈与額を加算して精算しなくてはなりません。一方で、この方式を活用すれば、後継者に資金がなくても一気に贈与できるメリットもあります。

 

相続時精算課税のケース

株式の贈与のケースで簡単にシュミレーションをしてみます。
前提として、相続人が子1人(後継者A)、先代経営者が後継者Aに生前贈与する株式が2,500万円、遺産が7,500万円だとします。

 

まず、ぴったり2,500万円を相続時精算課税で贈与すると、生前における贈与税は0円となります。
相続時における相続税の計算は以下の通りです。

 

7,500万円+贈与財産2,500万円-基礎控除額3,600万円=課税遺産総額6,400万円
6,400万円×相続税率30%-700万円=相続税1220万円

 

つまり、後継者Aが払う贈与税と相続税は合わせて1220万円となります。

 

暦年課税のケース

では、相続時精算課税を使わない、つまり暦年課税(一般的な贈与)をした場合はどのようになるでしょうか。

 

まず、相続開始の4年前までに(※1)5年に渡って500万円ずつ合計2,500万円を贈与したした場合は、特例税率が適用されますから、(500万円-110万円)×15%-10万円=年間の贈与税48.5万円となり、5年間合計で242.5万円の贈与税がかかります
(※1)相続開始前3年以内の贈与は相続税の課税価格に含めなくてはならない。

 

この場合に、上記のケースと同じ条件で相続税を計算すると以下のようになります。

 

7,500万円-基礎控除額3,600万円=課税遺産総額3,900万円
3,900万円×相続税率20%-200万円=相続税580万円

 

つまり、後継者Aが払う贈与税と相続税は合わせて822.5万円となります。

 

このケースでは暦年課税が有利となりましたが、相続開始前3年以内の贈与額は相続税の課税価格に含めなくてはならないことに加え、相続人の人数、贈与の金額や相続の金額によって暦年課税方式と相続時精算課税方式どちらが有利になるのかが変わってきます。贈与税と相続税の累進税率を横目に見ながらシュミレーションし、計画的に進めないと節税はできないのです。

 

ただし、相続時精算課税方式では、贈与の時点で価格が決定できるというメリットがあります。株式の値上がりが見込める場合は、暦年課税による贈与や相続時の値上がりによる負担増が考えられますが、相続時精算課税では、相続税の計算の際に、贈与が行われた時の価格が適用されますので有利です。逆に、株価が値下がりする場合は要注意です。この場合は贈与時の高い値段で相続税が計算されます。

 

以上は、株式について考えてみましたが、収益物件についてはまた異なります。継続してキャッシュフローを生み出す収益物件は、相続まで被相続人の財産を増やし続け、結果として相続税を増やすことになりますが、相続時精算課税方式を使うことによって、一気に相続人に贈与を行えば、相続人は収益物件からの収益を得られることになります。この収益を相続税納税資金として活用できるのです。勿論、暦年贈与でもこれは可能ですが、累進税率が高いため、評価額が45000万円を超えるようだと、55%もの税率となってしまいます。その点、相続時精算課税方式では、2500万円までは非課税枠になり、それを超えた場合でも一律20%の支払いで済みます。

 

この他にも、国の制度により節税は可能となっています。

 

代表的なものとしては、小規模宅地等の特例があります。特定住居用宅地の評価が80%となる制度で、平成26年1月1日以降から、上限面積が240平方メートルから330平方メートルに拡大されています。また、住居と事業用の土地を併用している場合、最高730平方メートルが評価減の対象となっています。

 

相続後の節税

厳密に言えば節税ではないのですが、相続により後継者が非上場株式を取得した場合、課税価格の80%に対応する相続税の納税が可能です。これは、経営承継円滑化法の「相続税の納税猶予の特例」と呼ばれるものです。

 

ただし、相続開始前と開始後に経済産業大臣から認定を受けなくてはいけません。この制度も事前の計画が求められるのです。

 

一方で、節税となる制度もあります。「みなし配当課税に関する特例」という制度です。通常、相続により非上場の株式を取得し、相続税の支払いのための資金づくり等の理由により、これを処分しようとした場合、特に譲渡制限のある株では、他人に譲渡することは難しくなるので、会社に買い取ってもらうケースが出てきます。会社側としては、自己株式の取得です。

 

この際、売却益の一部は配当所得ということになり、総合課税として最高で50%の税率で課税されることになります。このような税金の二重取りの構造を避けるため、相続税の申告期限の翌日から3年経過日までに会社に株式を売却すれば、申告分離課税として、20%の税金を納めるだけで済むというのが、「みなし配当課税に関する特例」というものです。得をするわけではありませんが、損をする割合が少なくなる節税策です。

 

まとめ

いずれにせよ、結論は一つしかありません。事業承継において節税を行おうとする場合、しっかりと事業承継計画を立て、計画的に進めることが必要ということです。